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「特定の民間再開発事業」の話 その2 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

「特定の民間再開発事業」の話 その2 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

 

「特定民間再開発事業」に係る買換えが「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」(租税特別措置法第37条の5)の対象となったのは昭和59年度からです。この条文の見出し自体、このときに「中高層耐火共同住宅の建設のための」から「中高層耐火建築物等の建設のための」に改正されています。この改正の前は、現在の措置法第37条の5第1項の表の第2号の中高層耐火共同住宅への買換えのみが、この特例の対象でした。「昭和59年度税制改正の要綱」(昭和59年1月27日閣議決定)には、次のように書かれています。

 

三大都市圏の既成市街地等(これに準ずる一定の地区を含む。)内において、民間の優良な再開発事業として地上階数4以上の建築物が建築される場合には、一定の要件の下で、その再開発事業の施行地区内の土地・建物と再開発事業により建築される建築物等との買換え・交換について、取得価額の引継ぎによる課税の繰延べを認める。」

 

そして、措置法第37条の5第1項に表の第1号として設けられたのが次の条文です(一部省略)。

 

譲渡資産:
「次に掲げる区域又は地区内にある土地若しくは土地の上に存する権利、建物又は構築物で、当該土地等又は当該建物若しくは構築物の敷地の用に供されている土地等の上に地上階数四以上の中高層の耐火建築物の建築をする政令で定める事業(以下この項において「特定民間再開発事業」という。)の用に供するために譲渡をされるもの(当該特定民間再開発事業の施行される土地の区域内にあるものに限る。)」


買換資産:
「当該特定民間再開発事業の施行により当該土地等の上に建築された中高層耐火建築物(当該中高層耐火建築物の敷地の用に供されている土地等を含む。)又は当該中高層耐火建築物に係る構築物」

 

譲渡資産については現行の条文と同じですが、買換資産は今では次のように規定されています(一部省略)。

「当該特定民間再開発事業の施行により当該土地等の上に建築された中高層耐火建築物若しくは当該特定民間再開発事業の施行される地区内で行われる他の特定民間再開発事業その他の政令で定める事業の施行により当該地区内に建築された政令で定める中高層の耐火建築物(これらの建築物の敷地の用に供されている土地等を含む。)又はこれらの建築物に係る構築物」

昭和59年度に買換え特例の対象に加えられたときは、買換資産は譲渡した土地の上に建てられるものに限定されていたのですが、今では同じ地区内の別の事業で建てられたものでもよいことになっています。この改正が行われたのは平成3年度で、このとき、前回取り上げた「特定の民間再開発事業」(措置法第31条の2第2項旧第12号:昭和63年度税制改正で「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の対象となった事業)が「政令で定める事業」の一つとして位置付けられたのでした。

 

では、「特定の民間再開発事業」と「特定民間再開発事業」とはどう違うのか、見ていきましょう。

措置法の条文ではどちらも「地上階数四以上の中高層耐火建築物の建築をする政令で定める事業」なので、違いがわかりません。

そこで、それぞれの「政令で定める事業」を確認してみます。措置法施行令第20条の2旧第14項(特定の民間再開発事業)と同第25条の4第2項(特定民間再開発事業)に規定されています。

対象となる区域・地区や施行面積、また、都市施設(都市計画施設又は地区施設)の用に供される土地又は公開空地の確保が求められていることなどはほぼ同じですが、明らかに異なるのが次の要件です。

 

特定の民間再開事業:その事業の施行地区内の土地の高度利用に寄与するものとして財務省令で定める要件(措置法施行令第20条の2旧第14項第3号)
特定民間再開発事業:その事業の施行地区内の土地の利用の共同化に寄与するものとして財務省令で定める要件(措置法施行令第25条の4第2項旧第3号)

 

「土地の高度利用に寄与するもの」と「土地の共同化に寄与するもの」の違いです。
ということで、それぞれ財務省令(措置法施行規則)を確認してみます(一部省略)。

 

特定の民間再開発事業:
「施行令第二十条の二第十四項第三号に規定する施行地区内の土地の高度利用に寄与するものとして財務省令で定める要件は、同項に規定する中高層の耐火建築物の建築をすることを目的とする事業の同項第一号に規定する施行地区内の土地につき所有権を有する者又は当該施行地区内の土地につき借地権を有する者の数が二以上であることとする。」(措置法施行規則第13条の3旧第7項)

特定民間再開発事業:
「施行令第二十五条の四第二項第三号に規定する施行地区内の土地の利用の共同化に寄与するものとして財務省令で定める要件は、同項に規定する中高層の耐火建築物の建築をすることを目的とする事業の同項第一号に規定する施行地区内の土地につき所有権を有する者又は当該施行地区内の土地につき借地権を有する者の数が二以上であり、かつ、当該中高層の耐火建築物の建築の後における当該施行地区内の土地に係る所有権又は借地権がこれらの者又はこれらの者及び当該中高層の耐火建築物を所有することとなる者の二以上の者により共有されるものであることとする。」(措置法施行規則第18条の6第1項(令和5年度改正前の条文))

 

要するに、「特定の民間再開発事業」は、事業が行われる土地の権利者が2人以上であればよい(施行後の権利者の数は問われない=1人でもよい)のですが、「特定民間再開発事業」は、事業が行われる土地の権利者が2人以上で、中高層建築物が建った後の土地の権利者も2人以上でなければならない、ということになります。

 

財務省主税局税制第一課の職員による令和5年度税制改正の解説では、「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用対象から「特定の民間再開発事業」を除外することについて、次のように書かれています。

 

「昭和63年度改正において、異常な地価高騰等の下で、土地の供給の促進を図ることが極めて重要な課題であったことを踏まえて設けられたものですが、近年の同事業の適用実績がない状況を踏まえ、適用期限の到来をもって本措置が廃止されました。」

 

ところで、「特定民間再開発事業」「特定の民間再開発事業」のいずれも、特例によって民間による再開発事業を促進しようとする税法上の規定に基づくものであって、「都市再開発法」などに定めのある事業制度ではありません。「適用対象から除外する」という表現は、「特定の民間再開発事業」のために譲渡しても、あるいは「特定の民間再開発事業」で建てられた建物に買い換えても、特例の適用が受けられなくなる、と読めそうですが、実際は、「特定の民間再開発事業」といわれていたもの自体がなくなったということです。

建築散歩!No.13「大阪北浜 三井住友銀行大阪中央支店」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

建築散歩!No.13「大阪北浜 三井住友銀行大阪中央支店」

今回からは、工部大学校1期生の「曾禰達蔵(そねたつぞう)」設計の建築を見ていきましょう。大阪の「北浜」駅が最寄りの「三井住友銀行大阪中央支店」です。

銀行建築らしい建物ではないでしょうか。民間銀行の建物であり、昭和に入っている時期の建物ですので、正統な様式建築(古典主義)の建物としては、大阪でも最後の方の建物ではないでしょうか。

古典主義の柱の上部を柱頭(キャピタル)といいますが、このグルグル巻きのデザインは、「イオニア式」と呼ばれるものです。柱頭(キャピタル)は、このほかに装飾の無い極めてシンプルな「ドリス式」と、植物の葉をわさわさとあしらった「コリント式」が主なものだそうです。

堺筋の反対側を北へ少し行くと、「新井ビル」(大正時代の建物/設計:河合浩蔵/工部大学校4期生)があります。1階正面の柱の柱頭(キャピタル)をみると、こちらは「ドリス式」のようです。現地訪問の際は併せてどうぞ。

建築散歩!No.13「大阪北浜 三井住友銀行大阪中央支店」
建築散歩!No.13「大阪北浜 三井住友銀行大阪中央支店」
三井住友銀行大阪中央支店
建築散歩!No.13「大阪北浜 三井住友銀行大阪中央支店」
建築散歩!No.13「大阪北浜 三井住友銀行大阪中央支店」
新井ビル

 

 

 

「特定の民間再開発事業」の話 その1 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

yowa/2307

 

毎年行われる税制改正は、12月下旬の閣議で決定される「税制改正の大綱」が基になっています。これに基づく改正法案が翌年1月に召集される通常国会に提出され、可決・成立を経て年度末に公布、多くの改正規定は4月1日から施行されることになります。税理士など、事情に通じた人であれば、大綱の段階の文章で「あの条文がこう変わるのかな」と見当がつくのでしょうが、慣れていないと、とまどうことも少なくありません。

 

ここでは「令和5年度税制改正の大綱」に書かれた次の改正内容を見てみることにします。
「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」について、「適用対象から特定の民間再開発事業の用に供するための土地等の譲渡を除外する。」とあり、「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」について、「買換資産である中高層の耐火建築物の建築に係る事業の範囲から、特定の民間再開発事業を除外する。」とあります。「特定の民間再開発事業」が特例の対象となる事業から外れることになります。

 

「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」は租税特別措置法第31条の2に規定されていて、対象となる譲渡は同条第2項に列挙されています。今回の改正直前には18ありました。しかし、大綱にある「特定の民間再開発事業」という言葉は、どこにも見当たりません。この譲渡が優良住宅地の造成等のための譲渡の適用対象に加えられたのは昭和63年のことですが、「昭和63年度税制改正の要綱」(昭和63年1月12日閣議決定)でも、「特定の民間再開発事業の用に供するために土地等を譲渡した場合」と表現されています。そして、昭和63年3月31日に公布された「租税特別措置法の一部を改正する法律」で第31条の2第2項に加えられたのが、次の第5号(当時)です。

 

「五 地上階数四以上の中高層の耐火建築物の建築をする政令で定める事業を行う者に対する第三十七条の五第一項の表の第一号の上欄のイ又はロに掲げる区域又は地区内にある土地等の譲渡で、当該譲渡に係る土地等が当該事業の用に供されるもの」

 

令和5年度の改正直前の時点では第12号となっていました(それまでの改正によって地区の規定などは変わっています)が、この条文の「地上階数四以上の中高層の耐火建築物の建築をする政令で定める事業」が「特定の民間再開発事業」ということになります。

 

ところで、この事業を「特定の民間再開発事業」とするためには都道府県知事の認定を受けなければならないのですが(「政令で定める事業」の要件の一つです)、認定事務に関する昭和63年12月の建設省(当時)の都道府県知事あての文書に「一定の中高層耐火建築物の建築をする事業(以下「特定の民間再開発事業」という。)」という表現が見られます。階数や立地のほか面積などの要件が「特定の」の中に含められているわけです。

 

一方、「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」(租税特別措置法第37条の5)については、買換資産の対象となる建築物を建設する事業から「特定の民間再開発事業」が除外されるというのですが、この特例には適用対象となる買換えのパターンが2つあります。そのうちの1つは等価交換事業で利用される「立体買換えの特例」で、一般に「既成市街地等内における中高層耐火共同住宅建設のための買換え」(第1項第2号)といわれています。大綱の表現(この特例を規定している第37条の5の見出しです)から、改正があるのはこちらか? と考えてしまいそうですが、そうではありません。

 

第37条の5第1項第2号の買換えの対象となる資産を条文で確認すると、「当該事業の施行により当該土地等の上に建築された耐火共同住宅(当該耐火共同住宅の敷地の用に供されている土地等を含む。)又は当該耐火共同住宅に係る構築物」となっており、「当該事業」とは、「地上階数三以上の中高層の耐火共同住宅(主として住宅の用に供される建築物で政令で定めるものに限る。以下この項において同じ。)の建築をする事業」です。建築物の要件は政令に委ねられているものの、事業自体に「特定の民間再開発事業」の要素はありません。

そこで、もう1つの買換えである「特定民間再開発事業の施行地区内における中高層耐火建築物への買換え」(第37条の5第1項第1号)の対象となる買換資産について、条文を確認してみます。

 

「当該特定民間再開発事業の施行により当該土地等の上に建築された中高層耐火建築物若しくは当該特定民間再開発事業の施行される地区内で行われる他の特定民間再開発事業その他の政令で定める事業の施行により当該地区内に建築された政令で定める中高層の耐火建築物又はこれらの建築物に係る構築物」(一部省略)

 

「特定民間再開発事業」という言葉はありますが、ここにも「特定の民間再開事業」とは書いてありません。除外される事業があるとしたら、「その他の政令で定める事業」に違いない、ということになります。そこで政令(措置法施行令第25条の4第4項)を見ると、次のように書かれています(改正前)。

 

「法第37条の5第1項の表の第1号の下欄に規定する政令で定める事業は、次の各号に掲げる事業(中略)とする。

一 法第37条の5第1項の表の第1号の上欄に規定する特定民間再開発事業

二 法第31条の2第2項第12号に規定する事業

三 都市再開発法による第一種市街地再開発事業又は第二種市街地再開発事業

 

2番目の「法第31条の2第2項第12号に規定する事業」が、「特定の民間再開発事業」ですね。

 

さて、令和5年度税制改正については、改正された法律はもちろん、政令(施行令)や省令(施行規則)、関係する告示も令和5年3月31日に公布されました。「特定の民間再開発事業」に関する部分を確認すると、租税特別措置法の改正に「第三十一条の二(中略)第二項第十二号を削り、」とあり、同法施行令の改正には「第二十五条の四第四項第二号を削り、」とあります。このようにして、特例の対象から除外されたわけです。

法律の案文や新旧対照表は、法案が国会に提出された後、財務省のウェブサイトで見ることができるのですが、政令や省令については、公布されるまで確認できません(事前に確認できる方法があれば知りたいところです)。通常、政省令などを定める際に行われるパブリックコメントも、税制改正に関しては除外規定が適用されるようです(行政手続法第39条第4項第2号)。そもそも法律も成立していないのに、その成立を前提とする政省令について意見を募ることはできないということかもしれません。

 

ところで、「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」の中に、「特定民間再開発事業」という言葉が出てきていました。こちらは「特定の民間再開発事業」とは違い条文に書かれています。「の」のあるなしで何が違うのか、一方は税制上の特例から除外されてしまいましたので、いまさらの感はあるかもしれませんが、次回はこれらの違いについて見てみようと思います。

 

がもよんを歩く〈manabeコラム〉

がもよんを歩く

地下鉄(Osaka Metro)の蒲生四丁目駅で降り、地上にあがると、幹線道路の十字路に出る。
東京で言えば神保町あたりの雰囲気に似ている。高層の建築物が少ないが。
 
しかし、一歩、横道に入るとそこは路地といってもよい道で、せいぜい2階建ての古い住宅地である。この雰囲気は、大地主が一帯を所有していて、大規模開発が出来ていないエリア特有のものであり、案の定、この一帯は「杦田一族」が所有しているとのこと。
 
都市の計画上は、旧地主が持ちこたえられなくなり大規模な再開発が行われるほうが京橋の隣町というほぼ都心にあるこのエリアの発展に寄与するのであろうが、一般的には、地主側の論理は「一坪たりとも土地は減らさず次の代に継承する」であるので、この「がもよんにぎわいプロジェクト」が成り立っていると思われる。
不動産業、コンサルティング業の成功のカギは、大地主をつかまえられるかであるので、そういう視点でなぜ成功したのか、考えてみた。
 
まず、これだけの大地主であれば、当然、不動産業者は大勢近づいてくる。
 
建て替えましょう。新築しましょう。売却しましょう。買い増ししましょう。
 
これらのセールスは耳にタコで、それに付随して銀行、建築会社、税理士等々が様々な案を持ってくるのが、常態である。
 
がもよんの成功=和田欣也氏が杦田氏に入り込めた理由は、まず、不動産業者でないから、不動産の動き(売る、買う、貸す、借りる、建てる)による提案ではなく、古家の再活用といった不動産業者ならかったるくて出来ない角度から提案できたことが、一番であろう。
 
これは和田氏が、耐震金物販売から耐震建物設計という業種であったことが大きい。
 
地主からすると、売ったり、建てたりというリスクがあまりなく、かつ、現状を改善できるというメリットに加え、がつがつとした商売気質(宅建業者は不動産を動かさなければ手数料にならない)がなく信頼できたのでは、と想像できる。この辺のアプローチの仕方は、コンサルティング業を行ううえで、大いに参考になると思われる。
 
*売りましょう、建てましょう=そうしないと業者として手数料にならない。
一坪たりとも減らしたくない、という地主の思いに寄り添っていない。
 
また、30年の長きにわたる景気低迷期を経て、一族の資産状況も疲弊していたとのことで、これも、リスクの少ない事業へかじを切る大きな要因であろう。
 
次に、やはり、和田氏のコミュニケーション力と企画力、といった人的要素が大きいと思われる。そのなかでも、きちんとした形にとらわれない発想力は不動産コンサルティング業に携わる者には大いに参考になると思われる。
 
例えば、各店舗は、「数時間過ごすだけの場所ならいいと思える内外装」であり「自分の持ち物としてずっと暮らすなら不満が出るだろう仕様」である。
コストを考えると、実に正解な仕様である。

昨年度、不動産エバリュエーション事例コンテストで大賞を受賞した名古屋の「名駅二丁目三番街 再生の物語」プロジェクトも、リニア開通までの空地帯となった一角で、数年という短期間で回収するという命題のもと、4~5業態をミックスさせ常にどこかに人が入るという手法が際立っていたが、やはり「借りる側に立った」企画が成功のもとであろう。
 
単価の安いカフェは出店を断るというのも、不動産業なら、「うまくいかないだろうなあ」と思っても、手数料を目の前にして、断れるだろうか。
昼食に入った蕎麦屋は、確かにおいしくて愛想もよく、内装も雰囲気を味わえるぎりぎりのところで、かつ値段はけっこう高い。安くはない。しかも、メニューや雰囲気は、お酒を飲んでもらうところに徹している。

大げさに言うと、ローコスト・ハイリターン狙いである。
また、週に一回、店主会議を開いて、よもやまに良いアイデアがあったら採用し、各店舗の連携も強めていく、というコミュニケーション手法も、不動産業者にとっては苦手な分野ではないだろうか。これは、いろいろと形を変えて使えると思う。
 
最後に、がもよんの将来像はどうなるのだろうかと考えてみた。そのとき、ふと思い出したのが隅研吾氏が何かの本で書いていた「日本の都市の大規模再開発は面白くない。昔ながらのごちゃごちゃした家並みや商店街が、少しずつ変化、改善していくほうが楽しい」という言葉であった。
 
たぶん、経済効率性からすると、ほかのやり方が勝っているかもしれないが、商売している人も、住んでいる人も、遊びに来る人も、土地を貸している人も、みんな面白いと思うことを続けていくうちに徐々に変化し続ける、というのが正解なのかもしれない。
 

 

執筆者

真鍋茂彦 不動産流通推進センター 教育事業部長
公認 不動産コンサルティングマスター

 

 

 

 

建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」「国立西洋美術館」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」「国立西洋美術館」

引き続き、「片山東熊」設計の建築を見ていきましょう。「上野」駅が最寄りの「東京国立博物館 表慶館」です。
これもネオ・バロック様式の建物です。建物の説明は、写真のうちの解説板にわかりやすく書いてありますので、写真を見て(読んで)下さい。
山東熊で取り上げた迎賓館や京都国立博物館東京国立博物館は、いずれも有料ですので、京都と東京の新しい博物館での展示やイベントを確認して、併せて見学されるのも一法かと思います。
また、今後触れるかもしれませんが、上野はその他見どころのある建物(国立西洋美術館/設計:ル・コルビュジエ等々)が多々ありますので、併せて見学されるのも良いかもしれません。

建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」

建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」

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建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
建築散歩!No.12「東京国立博物館表慶館」
東京国立博物館表慶館
建築散歩!No.12「国立西洋美術館」
建築散歩!No.12「国立西洋美術館」
建築散歩!No.12「国立西洋美術館」
建築散歩!No.12「国立西洋美術館」
建築散歩!No.12「国立西洋美術館」
建築散歩!No.12「国立西洋美術館」

建築散歩!No.12「国立西洋美術館」

国立西洋美術館

 

建築散歩!No.11「京都国立博物館 明治古都館」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

建築散歩!No.11「京都国立博物館 明治古都館」

引き続き、「片山東熊」設計の建築を見ていきましょう。今回は京都の京阪本線「七条」駅が最寄りの「京都国立博物館 明治古都館」です。目の前にはバス停があり、バスも便利です。

こちらも大阪出張の帰りに寄り道です。この建物はフレンチ・バロック様式の平屋建てです。入口の係員の方に聞いたところ、耐震調査などにより、しばらくの間(開館時期未定)は閉館で内部での展示や見学は出来ないとのことでしたので、写真も外観だけです。

個人的には、外観のなかでも建物正面のペディメント(西洋建築の切妻屋根の妻側下部と水平材に囲まれた部分/日本建築でいう「破風」)を見てみたかったので、寒空の中それでも見学しました。

ここにある装飾は、伎芸天(ぎげいてん)と毘首羯磨(びしゅかつま)という仏教世界の美術工芸の神様が彫刻されています。右側の伎芸天は学問や芸術をつかさどる神様で、手には巻紙と筆を持っています。左側の毘首羯磨は工芸や建築をつかさどる神様で、手には鑿?とハンマーを持っています。

聞くところによると、これは「設計と施工」を表しているのではないかとのこと。日本では江戸時代までは、大工の棟梁が両方の最高責任者でしたが、明治期に西洋建築が入ってきた際、設計と施工は別々のものという考え方であったため、それを表現しているのではないかとのことです。

道路を挟んで、目の前は「三十三間堂」ですので、ついでに見学してみました。お時間があれば、智積院、豊国神社、方広寺などが隣接していますので、ご一緒にどうぞ。

建築散歩!No.11「京都国立博物館、明治古都館」
建築散歩!No.11「京都国立博物館、明治古都館」
建築散歩!No.11「京都国立博物館、明治古都館」
建築散歩!No.11「京都国立博物館、明治古都館」
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建築散歩!No.11「京都国立博物館、明治古都館」
建築散歩!No.11「京都国立博物館、明治古都館」
京都国立博物館 明治古都館」




取得費の話 その2 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

取得費の話 その2 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

購入金額などが不明だが、概算取得費(譲渡収入の5%)で計算すると税額が大きくなってしまうのでこれを避けたいといった場合、どうすれば概算取得費よりも多くの取得費がかかったと証明できるのか。税理士などのサイトの多くでは、国税不服審判所のある裁決事例を引いて、「市街地価格指数」「着工建築物構造別単価」により計算する方法を紹介しています。このように書くと、納税者側が採用した方法が裁決により認められたのだと思われるかもしれませんが、実際は逆で、税務当局が主張したものでした。

国税不服審判所の平成12年11月16日の裁決事例です(https://www.kfs.go.jp/service/JP/60/19/index.html )。

以下、裁決書(抄)を基に見ていきましょう。

確定申告について税務当局が更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことに対する審査請求の事例で、不動産の取得費が主な争点となっています。昭和59年に取得し、平成9年に3,150万円で売却した不動産について、納税者は取得費を3,260万円余(宅地分3,000万円+増改築費(減価償却費控除後))として申告しました。税務当局は、この3,000万円について、証拠となる資料の提出がなく、調査しても明らかにできなかったので、合理的な算定方法によらざるを得ない、として自ら検討します。そして、土地と建物のいずれの取得価額もわからない場合に考えられる算定方法として、次の4つを挙げています。

 

(1) 租税特別措置法第31条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)を適用する方法
(2) 土地の取得価額は土地の取得時の売買実例から算定し、建物の取得価額は譲渡価額の総額から土地の譲渡時の売買実例価格を差し引いて算出された建物の譲渡価額から減価償却費を控除する方法
(3) 土地と建物の固定資産税評価額を基に算定する方法
(4) 建物の取得価額を着工建築物構造別単価(建築物単価)から算定し、土地については市街地価格指数を基に算定する方法

 

その上で、それぞれの妥当性を検討し、冒頭に記したように(4)を採用することになるわけです。

(1)~(3)の不採用の理由は何かというと、(2)は、「土地の譲渡及び取得に係る売買実例がなく世情を反映した確実な指標とする合理的理由が見当たらない」、(3)は、「画一的で個別事情が反映されず、実勢価額が形成されないことが考えられる」としているのはいいとして、興味深いのは、(1)についても、「本件物件の取得費が一定率で計算され実額等がまったく反映されない」として退けていることです。確かに「実額等がまったく反映されない」のですが、もとは法律(租税特別措置法)に根拠があり、上級行政機関である国税庁からの通達(措通31の4-1)でも適用して差し支えないとされているわけですから、下級行政機関の主張としては意外な気もします。

それはともかく、審判所も、取得費の額が不明なものについては、「その費用を実額により算定することができないから、その部分については、推計の方法によって算定せざるをえない。」とし、次のように、税務当局が採用した方法を評価しています。

 

「本件新建物の取得費については、N調査会が公表している統計的な数値である建築物単価を基に建築価格を算定し、その価額から譲渡時までの減価償却費相当額を控除しているものであり、実勢価額の近似値と認められる時価相当額を推定していること、また、本件宅地の取得費については、本件物件の譲渡価額の総額から実勢価額の近似値と認められる当該建物の取得費を差し引いた額に、Mが調査し公表している六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の譲渡時に対する取得時の当該価格指数の割合を乗じて時価相当額を推定していることから、いずれも合理性があり、当審判所においても、これを不相当とする理由は認められない。」(N、Mというのは頭文字ではなく、固有名を登場順にアルファベットに置き換えて付けられたもので、N調査会=財団法人建設物価調査会、M=財団法人日本不動産研究所です(現在はいずれも一般財団法人)。また、「六大都市を除く市街地価格指数」とあるのは、本事例の物件が六大都市以外に所在するためです。)

 

取得費が不明である場合は推計によらざるを得ないが、その計算方法は合理性があるものでなければならないということですね。

この事例では、納税者側が主張した取得費3,260万円余に対し、審判所が認定した取得費は2,600万円余となりました。ちなみに概算取得費だと157.5万円です。

裁決は、あくまでも本事案における事実関係を基に導き出されたものですので、これを安易に一般化してはなりません。多くのサイトでも、上記のような計算方法が常に認められるわけではないので、詳しい税理士にご相談を、といったまとめ方をしています。また、日本不動産研究所のウェブサイトの「よくあるご質問」には次のようなQ&Aが載っています(https://www.kfs.go.jp/service/JP/60/19/index.html)。

 

Q. 税務申告(譲渡所得申告のための取得費算定)に市街地価格指数を使うことはできますか?

A. 譲渡所得申告のための取得費の算定に関する事項は、税務署の判断事項です。
私どもは「取得費の算定を行う場合、◯◯の指数を使うとよい。」というようなことを申し上げる立場にはございません。管轄の税務署にお問い合わせください。

 

さて、本題からは外れますが、この事例の納税者は所有権移転の仮登記日に手付金として800万円を、本登記日に残金の2,200万円を出金している(つまり購入費用が3,000万円であった)として預金の元帳の写しを提出しているものの、支払先の記載がないとして認められていません。納税者にとって厳しい判断にも思えますが、実は、取得費の算定の話とは直接関係ないので触れてこなかった部分に、ある事実がありました。

納税者は問題となった不動産(約700㎡)を購入した際、併せて約1,100㎡の農地を取得していました。納税者は、進入路がない袋小路であること、納税者には利用できないこと、所有権移転の本登記ができないこと(農地転用のことを言っているのでしょうか)を理由に、この農地には全く価値がなく、3,000万円はすべて問題の不動産の代金だったと主張しています。しかし税務当局の調査によれば、この農地は(問題の不動産の本登記日と同日に)納税者に移転登記がなされており、また道路に隣接しているとのことで、客観的に十分利用価値があるとし、審判所もこの農地が無価値であるとは認められないとしています。購入代金として3,000万円が支払われたのは事実だとしても、それは問題の不動産だけの代金ではなかったのではないか、と疑わせる余地があったということのようです。

 

 

yaf21.retpc.jp

 

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取得費の解説もあります。