不動産フォーラム21Web

不動産コンサルティングのためのMagazine

建築散歩!No.8「京都文化博物館」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~


建築散歩!No.8「京都文化博物館」

引き続き、「辰野金吾」設計の建築を見ていきましょう。今回は京都の「烏丸御池」駅が最寄りの「京都府京都文化博物館別館(旧日本銀行京都支店)」です。大阪から帰る途中、寄り道をしてきました。

辰野金吾は駅舎とともに、No.5の日銀本店はじめ、No.6の日本銀行大阪支店、今回の京都支店や、北海道の旧小樽支店、岩手銀行赤レンガ館(旧盛岡銀行本店本館)など、日本の銀行の本支店を多数手掛けています。

当日の天候は、ぽつぽつと小雨まじりでしたが、おかげで赤煉瓦と白い花崗岩の色がくっきりと撮影出来ました。1階と2階の配色や窓周りのデザインをがらりと変えていることが見て取れます。館内の配色もこげ茶色の天井や柱、木製建具と白い壁のツートンカラーで纏められていて美しいです。

また、当日館内では、「京都工芸繊維大学」大学院建築学専攻の生徒による修了制作作品の展示会が催されていました。この中から未来の建築家が生まれるのかもしれません。

建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
京都文化博物館
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
京都文化博物館
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
京都文化博物館

駅からの導線の途中にある「中京郵便局旧庁舎」も美しい赤煉瓦建築ですので、一緒にご覧ください。

建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
建築散歩!No.8「京都文化博物館」
京都市中京郵便局旧庁舎

 

取得費の話 その1 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

取得費の話 ― 『不動産フォーラム21』編集余話 ―

不動産の税制について調べていると、「えっ、こういうことだったの?」といった規定に出くわすことがあります。すぐに思いついたこととして「取得費」を取り上げてみます。そんなの知ってるよ、という方も多いとは思いますが、再確認の機会として、しばしお付き合いください。

譲渡所得税は、譲渡収入から取得費や譲渡費用を控除したものを譲渡所得として計算することになっています。その取得費とは、所得税法によれば「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」(所得税法38条)とされています。
一方、租税特別措置法(以下。措置法)には「長期譲渡所得の概算取得費控除」という規定があります。

「個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。」(措置法31条の4第1項本文)

所得税法38条は上記の譲渡所得の計算上の取得費の規定で、61条というのは昭和27年12月31日以前に取得した資産の取得費の計算の仕方などに関する規定です。措置法31条の4は、これらの規定にかかわらず、土地建物の長期譲渡所得の金額を計算する際は「収入金額の100分の5に相当する金額とする」といっていますので、実際の所得費がわかっていても、そうしなければならないようです。設備費も改良費も関係ないということになりますね。もっとも、この規定だけだと、ずいぶん昔から所有している不動産の話では? と考えてしまうかもしれません。しかし、ご存じのようにそうでもありません。国税庁所得税関係の措置法通達に次のような記述があります。www.nta.go.jp

「措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。」(措通31の4-1)

通達というのは一般に上級行政機関から下級行政機関に対して発出されるもので、この通達も法令の取扱いを統一するために各国税局長あてに出されているわけですが、申告に際しては納税者もこれを参考にすることが多いと思います。

ところで、措置法31条の4では「長期譲渡所得の金額の計算上」といっています。では短期譲渡ではどうなるのか、気になるところです。国税庁ウェブサイトには納税者からの照会に対する回答が質疑応答事例として掲載されていて、ここに次のような事例があります。

中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例(措置法37条の5。いわゆる立体買換えの特例)の適用を受けて取得した買換資産を3年後に譲渡した場合の取得費についての照会です(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/05/07.htm)。買換資産の譲渡価額が5,000万円だったのに対し、旧譲渡資産はかなり以前に取得したものとみえて、40万円だったとのことです。旧譲渡資産の取得価額は引き継がれますが、取得時期は買換えの時点なので短期譲渡となります。その取得費を、長期譲渡所得の計算の場合と同じように譲渡価格の5%として計算してよいかと質問したわけです。

これに対し国税庁は、

「現行法上、概算取得費控除の特例は、「長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費」に関する規定ですが、短期譲渡所得の金額の計算についても適用して差し支えありません。」

と回答しています。この事例では、実際の取得価額の6倍強の250万円を取得費とすることができたのです。

ここまでの話を簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。
「取得費とは取得に要した費用と設備費・改良費の合計額だが、長期譲渡であれ短期譲渡であれ、譲渡収入の5%相当額としてよい。」

措置法や通達には、「取得に要した費用の額が不明の場合は」といった限定は見られませんので、上記の質疑応答事例のように、取得に要した金額がわかっている場合でも、より多く控除できるのであれば、概算取得費控除を適用したほうが得になる、というわけです。

とはいえ、そのような例は多くはないのではないでしょうか。何しろ売却で得られた収入の95%が課税対象となるのですから。

実は、上記の措置法31条の4第1項には続き(ただし書)があります。

「ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
一 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
二 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第38条第2項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額」

譲渡収入金額の5%が土地や建物の取得費よりも少ないことを証明できれば、それぞれその金額とするとしているわけです。もちろん、購入金額がわかる売買契約書などがあれば簡単に証明できますが、そうしたものが存在しない場合、どうすればよいのでしょうか。

調べてみると、税理士などのサイトの多くに「市街地価格指数」というキーワードが見られます。

次回は、これについて調べてみることにしましょう。

 

 

yaf21.retpc.jp

 

業界新入社員への手紙 ― 宅建士に求められる想像力とは ―

業界新入社員への手紙 ― 宅建士に求められる想像力とは ―

「鶏口となるも牛後となるなかれ」――大企業の入社式を見ていると、どうしてもこのことわざを思い浮かべてしまう。これは大企業に属したことがない筆者の僻みかもしれない。事実「寄らば、大樹の陰」ということわざもある。


ただ、チャットGPTなど昨今のAI(人工知能)技術の進化を見ていると、組織の中の歯車的仕事は、いずれはすべてAIにとってかわられるわけだから、もはや自分以外の「なにかに頼る」という発想自体を捨てなければ生きていけない時代になるのではないかとも思う。

 

そう考えると、不動産業界を代表する資格(士業)でありながら、組織の一員でもある宅建士という仕事は〝微妙〟な職責であることが分かる。実際、15年の宅建業法改正で新設された15条に、「宅地建物取引士は購入者などの利益の保護に資するよう努めなければならない」ことが規定されたため、もし会社の指示とはいえ、この趣旨に反する行為をした場合は業法違反となる。もっともそれは業法の15条違反であって、宅建士法(まだ存在はしていないが)違反ではないところがミソである。

 

それはともかく、これから不動産業界の担い手となって働き始める人たちに言いたいことは、「仕事は何のためにするのか」という意識を鮮明にもってもらいたいということだ。「とりあえず、生きていくためには収入が必要」という考えは間違ってはいないが同時に、その仕事に人間としての〝誇り〟を感じることができなければ、結局いい人生にはならないということも理解すべきである。

 

なぜなら、そもそも「世のため、人のため」にあるのが仕事だから、仕事に誇りが感じられないとすれば、それはこの世の摂理に反した生き方をしているということだからである。

 

話は冒頭に戻るが、大企業に属していようがいまいが、人間が自分一人の力でできることは限られる。だから、「世のため、人のため」をより強く感じるためには価値観や志が近い人たちと同じ目標に向かって仕事をすることが望ましい。では、自分がやりたいこと、社会人としての志をどう見つければいいのか。

 

その意味で、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざの現代的意味を探るなら、大木に巻きつく蔓(つる)のような生き方をしていても、熱い志は生まれてこないのではないか。特に若いうちであれば、与えられた仕事と自己との疎外感、あるいは未熟さ・無力さに真剣に悩むところから自分ならではの志が生まれてくるものだからである。大樹に守られる境遇とは無縁のものだと思う。

 

そのうえで、微妙な職責である宅建士に求められる能力とはなにかを考えたい。〝宅建士法〟なるものが制定されるかどうかはともかく、宅建士が目指すべき方向は一つだ。依頼者の利益というよりも、依頼者の幸せな人生に資するということである。であるならば、宅建士の仕事が不動産取引を安全に導くことだけにとどまらないことは明らかだ。仮にそれだけなら、リーガル・チェックを含めいずれAIにとって代わられることになる。

 

そこで、宅建士として今後そなえるべき重要な能力がある。それは、〝AIとの共存社会〟が始まろうとしている今、不動産業界が人々を幸せにするためにはAIにどういう仕事をさせるべきかを考えるセンシティブな想像力である。なぜなら、人間の幸せとは何かというテーマがいよいよ深刻化しつつあるからである。

 

 

執筆者

本多信博氏 住宅新報 顧問

1949年生まれ。長崎県平戸市出身。早稲田大学商学部卒業。住宅新報編集長、同編集主幹を経て2008年より論説主幹。 2014年より特別編集委員、2018年より顧問。
著書:『大変革・不動産業』(住宅新報社・共著)、『一途に生きる!』(住宅新報社)、『百歳住宅』(プラチナ出版)、『住まい悠久』(同)、『たかが住まい されど、住まい』(同)、『住文化創造』(同)など
現在、住宅新報に連載コラム「彼方の空」を執筆中。

 

建築散歩!No.7「南海電鉄 浜寺公園駅舎」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

南海電鉄 浜寺公園駅舎

引き続き、「辰野金吾」設計の建築を見ていきましょう。今回は、堺市南海電鉄本線の「浜寺公園」駅舎です。
難波駅から特急を乗り継いで約20分、各駅停車で約30分です。

現在、高架化工事が進んでいる為、改札口は別途設けられていました。辰野金吾の設計した公共の建物では、最も小さいものではないでしょうか。東京駅よりも古く、明治時代に建築された木造駅舎です。

遠目にはちょっと気づき難く、壁面部分は全体に白く見えますが、「ハーフティンバー」の部分が淡いブルー色とグレー色に塗り分けられていて、屋根にはしっかり「ドーマー窓」が付けられています。なかなかおしゃれな駅舎です。

浜寺公園は駅の目の前で、当時は海水浴場(リゾート)だったようですね。

 

南海電鉄 浜寺公園駅舎

南海電鉄 浜寺公園駅
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅舎
南海電鉄 浜寺公園駅

 

建築散歩!No.6「日本銀行大阪支店 旧館」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

2月に「相続対策専門士」コース2023の運営のため、大阪に行って参りました。その帰りに寄り道です。前回に引き続き「辰野金吾」の設計による「日本銀行大阪支店 旧館」を見ていきましょう。

大阪・中之島にありますので、最寄り駅は「淀屋橋」駅や「大江橋」駅です。御堂筋に面して市役所の向かいですので詳細はいらないでしょう。
川や大通りに面していますので、東京・日本橋の本店と違い外観を眺めやすい場所にあり、デザインはやはり似ています。ベルギー国立銀行等をモデルとした古典主義の流れを受けたもののようで、夜景もちょっとしたものですので機会があれば眺めてみて下さい。

中之島には、御堂筋を挟んで向かいの市役所の奥には、「大阪府中之島図書館(設計:野口孫市)」、「大阪市中央公会堂(原設計:岡田信一郎/実施設計:辰野片岡建築事務所)」がありますので、こちらも見比べてみては如何でしょうか。
中之島図書館は、追々取り上げていきたいと思います。

日本銀行大阪支店 旧館
日本銀行大阪支店 旧館
日本銀行大阪支店 旧館日本銀行大阪支店 旧館日本銀行大阪支店 旧館日本銀行大阪支店 旧館
日本銀行大阪支店 旧館
日本銀行大阪支店 旧館日本銀行大阪支店 旧館日本銀行大阪支店 旧館
日本銀行大阪支店 旧館

大阪市中央公会堂は、当センターホームページ/フォローアッププログラムのTopicsのアラカルトもご参照ください。

不動産流通推進センター フォローアッププログラム (retpc.jp)

<[コラム] Fupのなかの人> 日本の美しい建物レポート3 (大阪市中央公会堂)

建築散歩!No.5「日本銀行本店 本館」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

日本銀行本店 本館
日本銀行本店 本館

前回に引き続き、「辰野金吾」の設計による建築を見ていきましょう。

今回は、「日本銀行本店 本館」です。この建物は「ネオ・バロック様式」が用いられ、いわゆる辰野式と呼ばれる赤煉瓦と白い大理石のデザインではありませんが、構造は1階は石積み、2~3階はレンガ積みで表面を薄い石張りで仕上げて軽量化しています。

予約をすれば内部を見学できますが、ふらっと見に行ったためドーム下の正面玄関は見られませんでした。

上から見ると「円」の字に見えるといわれる建物の左右の翼棟(円の字の両足の部分)の先端を壁(門)でつないで見えないようなデザインにしています。中央銀行ですから、防御機能を高めたともいわれていますが、その他諸説あるようです。

駅舎、銀行などで様々な歴史様式を採用した辰野金吾の建築の中では、次回紹介する「日本銀行大阪支店」はデザインが似ているものかと思います。

日銀本店の道路を挟んで周りには、バロック様式の「三井本館」や「三越本店」、外壁の装飾を排除した「近三ビル」(旧森五商店ビル/設計:村野藤吾)、アーチを多用した出入り口や半円形の窓の幾何学的な装飾が特徴の「常盤小学校」などもあり、建築様式の違いを見比べられますので、現地訪問の際はぜひ一緒にご覧ください。

日本銀行本店 本館
日本銀行本店 本館
日本銀行本店 本館日本銀行本店 本館日本銀行本店 本館日本銀行本店 本館
日本銀行本店 本館