不動産フォーラム21Web

不動産コンサルティングのためのMagazine

建築散歩!No.3「日本建築史 後編」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~

日本建築史 後編

今回は、日本の建築史(後半)として近代から現代について「建築家」にスポットを当てて触れてみたいと思います。

工部大学校の第1回卒業生で主席の「辰野金吾」は、欧州留学を経て、日本全国各地に辰野式と呼ばれる建築作品を手がけています。当時の欧州では、リヴァイヴァル建築が主流であったため、過去の建築様式を正確に再現する様式建築を残しています。

「片山東熊」は、フランスで会得したネオ・バロック第二帝政)様式を得意とし、宮廷建築家として活躍しました。いずれも明治新政府が進める近代化(欧州の技術、文化を急速に取り込む方針)を具現化させていったものといえるでしょう。

この後、20世紀に入るころ、欧州では自由な造形を追求するアール・ヌーボーやセセッションが流行し、第2世代の建築家の中にその影響を受けた者がいます。「武田五一」(京都の同志社女子大学ジェイムズ館等)、「野口孫市」(大阪府中之島図書館等)などです。

欧米ではなくアジアに目を向けた「伊東忠太」は、築地本願寺を手がけています。ご覧になったことがある方は、インドの石窟寺院を彷彿とさせるデザインにピンとくるのではないでしょうか。

大正時代末期には、日本にもモダニズム建築が導入されてきます。我が国で最初にモダニズム建築を導入したといわれる「山田守」は、逓信省東京逓信病院などを手がけていますが、建物は残念ながら現存していません。

山田の逓信省の後輩の「吉田鉄郎」は日本の伝統をモダニズム建築の中に取り入れようとした建築家といわれており、東京中央郵便局(建物前面を残して後背部はJPタワービル)が東京駅丸の内南口駅前に残っています。

東京中央郵便局
東京中央郵便局
東京中央郵便局東京中央郵便局東京中央郵便局
東京中央郵便局
東京中央郵便局東京中央郵便局
東京中央郵便局

国内では、フランク・ロイド・ライトの影響が大きく、同時に欧州で活躍する有名建築家に師事した者もいます。「山口文象」は、グロピウスのもとで、また「前川國男」や「坂倉準三」は、ル・コルビュジエのもとで学んでいます。

太平洋戦争により、主要都市では空襲により甚大なダメージを受け、明治期より続いた様式建築の建設は終焉を迎え、戦災からの復興に追われ、モダニズム建築の建設も一旦中断されましたが、1950年頃から再び活気を取り戻していくことになります。戦後の建築界で特筆に値する建築家は「丹下健三」でしょう。建築家であり、東京大学で教鞭もとり、多くの建築家を輩出してもいます。

高度経済成長期後半になると、未来の姿を提示し、世界に対しアイデアを発信していくべきと考えるようになり、その業界の動きの一つとして「メタボリズム」運動があります。生物学でいう「新陳代謝」を意味するものです。「菊竹清訓」、「大高正人」、「槇文彦」、「黒川紀章」などがメンバーです。

1973(昭和48)年には、オイルショックが起こり、経済成長と同様に建築界もターニングポイントを迎えます。モダニズム建築に疑問を持つものがあらわれ、いわゆるポスト・モダニズム建築の探求です。「磯崎新」、「安藤忠雄」、「伊東豊雄」といった建築家です。

伊東豊雄の代表作の一つ、「せんだいメディアテーク」は、当センター・フォローアッププログラムTopicsのアラカルトで取り上げていますので、ご参照ください。

不動産流通推進センター フォローアッププログラム

<[コラム] Fupのなかの人> 日本の美しい建物レポート2 (宮城県宅地建物取引業協会、全日本不動産協会宮城県本部の訪問を終えて寄り道)

残念ながら昨年末、「磯崎新」は亡くなりましたので、私はお正月に代表作の一つ、「つくばセンタービル」を見に行きました。今回は最後にこれを取り上げ、冥福を祈りたいと思います。

1983(昭和58)年築の同ビルはL字型の配棟で、その中心にある楕円形広場のペイヴメント(敷石を敷きつめた歩道)に、ミケランジェロカンピドリオ広場のデザインを採用するなど、歴史的モチーフを応用しつつ、新しい空間を創造しています。

つくばエクスプレス(TX)「つくば」駅のまさに駅前です。秋葉原から快速なら45分ですので、首都圏の方は是非一度、ご見学を検討してみて下さい。

つくばセンタービル
つくばセンタービル
つくばセンタービルつくばセンタービルつくばセンタービルつくばセンタービル
つくばセンタービル
つくばセンタービルつくばセンタービルつくばセンタービルつくばセンタービル
つくばセンタービル
つくばセンタービルつくばセンタービルつくばセンタービル
つくばセンタービル