不動産フォーラム21Web

不動産コンサルティングのためのMagazine

建築散歩!No.1「様式から見た西洋建築史」~マスターと共に歩む、街歩きを兼ねた建築物の探訪~


不動産を扱う我々は、土地の価値や権利関係を扱うとともに、建物に関しても同様のことを扱うため、建物自体に対する造詣を深めていくことも大事なことです。
このコーナーでは肩の力を抜いて、建物に関する知識を深めていくべく、各地にある建物を散歩がてらに眺めていきます。

ひとえに建物といっても、構造、様式、時代など切り口によって様々であるため、まずは様式を中心に西洋の建築史を簡単に眺めてみましょう。
西洋建築として歴史上最初に認識されるのは、紀元前の古代のピラミッドに代表される「エジプト建築」でしょう。さらに「オリエント建築、ギリシア建築、ローマ建築」などが知られています。その後、「初期キリスト建築、ビザンティン建築イスラム建築、ロマネスク建築」、尖頭アーチが大きな特徴の「ゴシック建築」(サン・ドニ修道院付属聖堂、ミラノ大聖堂)など、宮殿や宗教建物として紀元後から中世の歴史を形成しています。

ビザンティン建築 - Wikipedia
ロマネスク建築 - Wikipedia
ゴシック建築 - Wikipedia

15世紀に入り始まった「ルネサンス建築」(フィレンツェ大聖堂など)では、造形的には古典建築を用いつつ、技術的にはゴシック、ビザンティン建築等の長所を取り入れています。さらにローマのサン・ピエトロ広場、パリのヴェルサイユ宮殿に代表される「バロック建築」、18世紀以降、バロック建築に反発し、伝統的な様式や手法に理想を求め歴史的様式を採用した「リヴァイヴァル建築」を経て、近代建築へと繋がります。

ルネサンス建築 - Wikipedia
バロック建築 - Wikipedia

ルネサンス建築 - Wikipedia
バロック建築 - Wikipedia

18世紀半ばにイギリスで興った産業革命が、建築に大きな変化もたらしました。新しい建材として鋳鉄の採用です。土木構築物である橋梁や、アーチ状の大空間、エッフェル塔のような塔がそれです。エッフェル塔は建設当初、鉄の化け物として評判が悪かったのですが、今では世界有数の観光名所となっています。ままある時代感覚と先端性の融合の難しいところです。
大量生産による粗悪な工業製品が広まるなか、職人による手仕事に立ち返ろうとする動きが、いわゆる「アーツ・アンド・クラフツ運動」と呼ばれるもので、後の「アール・ヌーヴォ」(英語にすれば、new artでしょうか)につながっていきます。
近代建築において重要な要素の一つとして、鉄筋コンクリート(RC)構造が挙げられます。コンクリートは、古代ローマ建築で既に普及していた材料で、セメントの成分によっては今のコンクリートより強固ではという話もあるようです。19世紀末、鉄筋と組み合わせるという新たな用い方が発明され、近代建築になくてはならない構造材料となっています。
その後、欧州各地で興った近代建築運動には、共通したイデオロギーがあり、それは過去の歴史様式や伝統的手法と断絶し、合理主義・機能主義・実用主義を根拠とした建築を目指すというもので、特徴として単純な箱型の形態、平滑な壁面、表面装飾の排除が挙げられ、「モダニズム建築」と呼ばれるようになります。最も知られた建築家は「ル・コルビュジエ」でしょう。アメリカを代表する近代建築家は、「フランク・ロイド・ライト」でしょうか。日本では帝国ホテルを設計し、建物の一部が愛知県犬山市に移築されています。

モダニズム建築 - Wikipedia

合理主義・機能主義に基づいたモダニズム建築が主流となりつつある中、1925年パリでアール・デコ展(現代装飾産業芸術国際博覧会)が開催されましたが、装飾的な建築は欧州では受け入れられず、ニューヨークのスカイスクレイパー(超高層建築)で盛んに用いられました。クライスラー・ビルやエンパイア・ステイト・ビルと聞けば多くの方がご存じでしょう。
第二次世界大戦は、建築に甚大な被害を及ぼすとともに、欧州の歴史的都市は、伝統を守りつつ戦前の姿に修復されたため、モダニズム建築は都市郊外に多数建てられ、経済復興の源泉となったといわれています。(米国は、この大戦の被害が少なかった国です)
1960年代には、世界的に都市の未来像がテーマとなり、日本でも丹下健三による「東京計画1960」等が発表されています。1970年代以降、新しいタイプの建築に対して「ポスト・モダニズム建築」と呼ばれるようになり、まさしくモダニズムに続く、次の時代の建築様式を指す用語です。ポスト・モダニズム建築は、現在も試行錯誤の段階にあり、いまだ結論には達していないと言われています。

ポストモダン - Wikipedia

西洋の建築史をざっくり駆け足で眺めてきましたが、皆様で興味のある時代の建築様式を深掘りしてみて下さい。次回は、日本の建築史を眺めることにしましょう。