宅建士のライフスタイル ~「聞く力」は誠実さの証明~|住宅評論家 本多信博

不動産業界が何気なく、結構頻繁に使う言葉に「ライフスタイル」がある。
「賃貸住宅はその時々のライフスタイルに応じて気軽に住み替えることができる」とか、「近年、若者のライフスタイルに変化が見られる。それは……」といったふうに。ただ、この二つの例を見てもわかるように、ライフスタイルという言葉の使われ方はかなり幅広い。前者のように単に「生活形態」といった意味でも使われるし、後者のように「生きていく上での価値観」といった意味合いが加わることもある。「ライフスタイル」という言葉がもつ最も奥深いところは「世界や自分の人生にどういう〝意味付け〟を行うか」ということである。まさに、自分の命(ライフ)をどう使うかという覚悟をしめす言葉ともいえるだろう。

「人生に意味なんかない」という人もいるかもしれないが、生まれてしまった以上は生きていくしかないのが人間だ。生きていく以上はそこに、なんらかの意味付けが必要になる。だから、「人生に意味なんかない」と思いながら生きていくのも一つのライフスタイルではあるが、それは幸福な人生といえるだろうか。


不動産(住宅)流通とは物件ではなく、売り手・買い手の「人が動く市場」と捉えれば、それぞれの当事者が叶えようとしている新たなライフスタイルの重みに気付くはずだ。購入動機は何か、その時期(いつまでに)、資金は(自己資金の額、親からの援助はあるのか)、親との同居計画は、住宅ローンは夫婦それぞれかなど聞けることは何でも聞く。売り手に対しても同様である。売却動機は、売却代金の使途は、新たな住まいの確保はなど、聞くべきことはなんでも聞こうという姿勢こそ営業担当者としての誠実さの表れである。

なぜなら両当事者の事情が分かっていればいるほど不動産のプロとして適切なアドバイスができるからだ。適切なアドバイスができなければ、成約する確率も低くなる。つまり、営業担当は〝おせっかい屋〟で、かつ〝よき相談相手〟でなければならない。そのためにも、営業担当は宅建マイスターや公認不動産コンサルティングマスターなど社会的信頼の高い資格をもっていることが求められる。

それにしても、売買当事者のライフスタイルの実現をサポートすることが宅建士の仕事だとすれば、売買契約の成立をもって仕事が終了したとは言い難い。両当事者の売買動機とめざしたライフスタイルが現に叶えられていることこそ重要だからだ。その確認にはどういう方法があるのかを考えることも〝上級宅建士〟の責務ではないだろうか。


「人生に意味なんかない」と思いながら生きていくのも一つのライフスタイルだと先に述べたが、少なくとも不動産を購入しようとする人はそうではない。新たな生活に大事な人生の意味を見出そうとする人たちである。それをサポートするところに喜びを感じるのが宅建士のライフスタイルとなる。


住宅評論家・住宅新報メディアグループ顧問 本多 信博 氏

本多 信博 住宅評論家・住宅新報顧問

1949年生まれ。長崎県平戸市出身。早稲田大学商学部卒業。住宅新報編集長、同編集主幹を経て2008年より論説主幹。 2014年より特別編集委員、2018年より顧問。
日本不動産ジャーナリスト会議会員
明海大学不動産学部非常勤講師
著書:『大変革・不動産業』(住宅新報社・共著)、『一途に生きる!』(住宅新報社)『住まい悠久』(プラチナ出版)など
論文: 週刊エコノミスト、業界団体季刊誌など多数
講演: 業界団体、NPO法人、JAなど 。

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