コンサルの入り口に空き家ビジネス ~相談に来てもらうための備えと心構え~|住宅評論家 本多信博

abandoned towns - Day

 不動産業界において空き家ビジネスが注目されるようになったのはいつごろからだろうか。公認 不動産コンサルティングマスターも数多く参加している一般社団法人全国空き家相談士協会(林直清会長)が発足したのは2015年だった。ちなみにこの年は「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が制定された年でもある。その後、17年には全国の地方公共団体や関係団体などが空き家に関する情報共有と対策検討を目的に「全国空き家対策推進協議会」も設立された。

 おそらく14年に発表された総務省の住宅・土地統計調査で全国の空き家が820万戸(空き家率13.5%)となったことが、空き家問題がクローズアップされるきっかけとなったのだと思う。19年に発表された同調査では空き家は846万戸(同13.6%)に達している。

 不動産業者にとって、空き家問題は目の前の空き家をどうするかといった個別の問題ではない。今後、地域に空き家が増えていくのはほぼ確実だから(その活用方法やポテンシャルは地域によって様々だが)、それを〝負動産〟と見るか、〝宝の原石〟と見るかの問題である。というよりも、地域から逃げ出すことのできない地元不動産会社にとって、空き家問題は「地域の再生」と同義語であり、自社存続の〝一丁目一番地〟である。
 逃げ出す自由があるのは地域住民のほうである。発展性がなく面白味もなければ、いずれは転居していく人たちが増え、町は衰退していく。東京の人気住宅地を背負う不動産会社は、今のところそんな心配は毛ほども抱かないだろうが、油断しているとこれまで姿のなかった大手・中堅がいつのまにか入り乱れる主戦場と化しているかもしれない。そうなる前に、地域のことを考え「何でも相談に乗ってくれる」不動産会社という評価を確立しておくべきである。

 考えて見れば、住宅を買うとか売るとか方針がはっきりしているときでさえ、不動産会社の敷居は高いのに、高齢の親が一人で住んでいる家を将来はどうしたらいいかといった曖昧模糊とした相談を持ち込める不動産会社は少ない。しかし、これからの不動会社の役割や社会的使命はむしろそこにある。空き家予備軍といわれる高齢者の一人暮らし世帯問題、住宅弱者の居住支援、衰退するコミュニティなど国がなかなか本気で取り組もうとしないやっかいな問題に真剣に取り組む姿勢こそ、これからの不動産会社のあるべき姿と考える。

 不動産会社の敷居が高いのは、住民側から見て「こちらの世界とあちらの世界」が隔絶して見えるからである。そうではなくて、町の不動産屋は自分たちと同じ悩みを持つ同じ世界の住民なのだと思ってもらえる工夫や努力をすべきである。そうした備えの一つに、不動産のプロと呼ばれるにふさわしい宅建マイスターや公認 不動産コンサルティングマスターの称号をもつ人材を確保しておくことは言うまでもないことである。

住宅評論家・住宅新報メディアグループ顧問 本多 信博 氏

本多 信博 住宅評論家・住宅新報顧問

1949年生まれ。長崎県平戸市出身。早稲田大学商学部卒業。住宅新報編集長、同編集主幹を経て2008年より論説主幹。 2014年より特別編集委員、2018年より顧問。
日本不動産ジャーナリスト会議会員
明海大学不動産学部非常勤講師
著書:『大変革・不動産業』(住宅新報社・共著)、『一途に生きる!』(住宅新報社)『住まい悠久』(プラチナ出版)など
論文: 週刊エコノミスト、業界団体季刊誌など多数
講演: 業界団体、NPO法人、JAなど 。

この記事をシェア

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です