〝セカンドオピニオン〟という提言に賛成 流通市場に真のプロフェッショナルを|住宅評論家 本多信博

売主の「なるべく早く、少しでも高く売りたい」という希望は、仲介担当者の利益と完全に一致する。成約価格が高いほど媒介報酬が増えるからだ。また成約までの期間が短いほど営業効率も上がる。しかし、買主の「いい物件を、なるべく安く買いたい」という希望は仲介担当者の利益と合致しない。それがたとえ共同仲介で買主側の立場に立って交渉を行う仲介担当者であっても、報酬のことを考えれば成約価格は高いほうが望ましい。成約優先で値引き交渉をすることはあるが、それも成約を急ぎたいからである。しかし、買主は「時間がかかっても、なるべく予算内でいい物件を見つけたい」と思うのが普通だろう。

つまり、もともと利害が真っ向から対立する売主と買主の間に立って話をまとめる「不動産仲介」は理論的には成立しない。ただ、辞書を引くと「仲介」は「仲立ち」ともあるので、お見合いをして互いに「感じがいい」と思った両者(男女)の間を仲立ちして話をまとめる「仲人」のイメージがなくもない。「不動産仲介は、仲人のようなもの」という説明を昔聞いたことがあるような、ないような……。宅建業法では「媒介」というのに、業界が「仲介」という言葉を使うのはそのためかと思うのはうがち過ぎだろうか。

昨年4月に発足した一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会が今年2月に行った不動産流通推進センターに対する提言の中に、「宅建マイスターの業務の一つとして〝セカンドオピニオン〟を規定してもらいたい」という項目があった。つまり、単独仲介か共同仲介かにかかわらず、買主の利益保護のためには契約成立を最優先事項とする仲介担当者の意見をうのみにするのではなく、第三者としての立場から専門家に評価してもらう仕組みが必要ではないかという提言である。

これまでの流通業界ではあまり聞かれなかった新鮮な提案だと思う。ただ、セカンドオピニオンに対する報酬を払い、更に成約する場合には仲介担当者に対する仲介手数料も払わなければならないとなると、買主の負担が重すぎる。そこで、提言では仲介手数料は売主側からしか受領せず、共同仲介の買主側担当者への手数料はその中から払うという米国型方式の普及を勧めている。

流通業界にそのような仕組みが定着すれば、セカンドオピニオンを提供する宅建マイスターはまさに依頼された買主の利益保護のためだけに働くことができる。それがプロフェッショナルとしてのモチベーションを高めることにつながっていく。真のプロフェッショナルとは社会や人のために尽くす者のことである。誤解を恐れずに言えば組織のためでもなく、ましてや法律のためでもない。宅建士は15年の業法改正で「士業」になったと言われるが、いまでも不動産会社に属する社員であり、宅建業法を満たすための人的要員という印象が強い。

住宅評論家・住宅新報メディアグループ顧問  本多 信博 氏

本多 信博 住宅評論家・住宅新報顧問

1949年生まれ。長崎県平戸市出身。早稲田大学商学部卒業。住宅新報編集長、同編集主幹を経て2008年より論説主幹。 2014年より特別編集委員、2018年より顧問。
日本不動産ジャーナリスト会議会員
明海大学不動産学部非常勤講師
著書:『大変革・不動産業』(住宅新報社・共著)、『一途に生きる!』(住宅新報社)『住まい悠久』(プラチナ出版)など
論文: 週刊エコノミスト、業界団体季刊誌など多数
講演: 業界団体、NPO法人、JAなど 。

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